ヨサヲさま
遠野への旅、ホップ同様、大収穫があったようですね!「ビアツーリズム」という名称もカッコいいです。コロナ禍で近隣旅行の「マイクロツーリズム」が注目されていますが、さらに一歩進んだ明確なコンセプト。ステキな看板を掲げた地域おこしに、熱意を持った人々が集まるのも理解できます。
結局は人、とのヨサヲさんの再確認。私も遠野で実感した記憶があります。
馬と同居する曲がり家民宿に泊まり、座敷童や河童、オシラサマなどを訪ね歩いた時のこと。広がる風景は決して特異ではなく、よくある日本の風景であることに気づきました。もちろん、たびたび飢饉に遭った東北の寒村と他では環境も違い、圧倒的な自然の厳しさが亡き子を童神に見立てる民話につながった面もあるでしょう。けれども、やはり、本州に似た風景はたくさんあります。
では何が違うのか。私は「遠野には物語を伝えた人がいた」のだと思うのです。
まず、地域の口伝に価値を見出して蒐集した佐々木喜善という人がいた。そして、佐々木の話を整理して、世に知らしめた柳田がいた。だから「遠野物語」は残ったのでしょう。どんなに素晴らしい潜在力が地域にあろうと、結局は人。人がいなければ宝の持ち腐れで、忘れられて消えてしまう。発掘して新しい価値を与えたり、地域にフィットした新機軸を生むのは、やっぱり「人の存在」だと気づいたのです。
さらに「交通アクセスがよくない」は、決してデメリットではありません。
確かに遠野はその名の通り遠かった。花巻からJR釜石線で単線をコトコト約1時間。しかし、この1時間が日常からの切り替え装置に働くのです。
たとえば、私の家の近くの京都コンサートホール(京都市左京区)。エントランスからホールまで、わざわざ遠回りして螺旋のスロープを歩かねばなりません。日常から、音楽を楽しむという非日常への助走路、という狙いです。
どっぷりと何かを楽しむには、小休止やブランクになる距離感が大切なのだと思います。家の中が即座に職場や会議室になるコロナ禍の便利な現代だからこそ、リアルな体験には、適当な距離や手間が必要です。与謝野をはじめとする京丹後、関西の都市部と絶妙な距離感と思いませんか。素晴らしい!
与謝野は絶妙な距離ですが、たとえそれ以上に遠くても、遠いからダメということもありません。
私は数年前にスコットランド東北部にあるエコビレッジに短期留学したのですが、めちゃくちゃ不便な辺境の地に世界中から人が集まっていることに心底驚きました。人は求めているものがあれば、どんなに遠くても出かけいくのでしょう。1度行けば、心の距離も縮まり、いつでも行ける気がするし!
さて、アクションとアクションの間に適切なブランクが必要、との考えは日常生活にもいえますよね。日々を大切に生きるためにも。
なのに、先月末のハロウィンを終えた街の装飾は、もうクリスマス(写真)。追い立てられて、月日の過ぎる速さに身体も記憶も付いていけません。どうしよう!
ミヤコさん
早いもので11月。今年も残すところ2か月となりました。秋というより冬を感じる寒い日もあり、思わず暖房を入れる日もあります。
先週、ホップ・ビールの視察研修として、岩手県遠野に行ってきました。遠野は柳田国男「遠野物語」や河童伝説でおなじみですが、今やホップ・ビールの町。与謝野のホップ作りや醸造事業の今後の取り組みの参考にと、関係者8人で訪れた視察研修でした。
遠野市はは人口約2万5千人。与謝野町とほぼ同規模。交通アクセスも決して良いとはいえず、岩手県の内陸にぽつんと存在する盆地です。ただ半世紀前からキリンビールの契約農家としてホップ作りが盛んで、毎年8月最終週の休日には全国から1万人を超える遠野ホップファンが集まる大イベント「ホップ収穫祭」が開催されます。ここまでビアツーリズムを進化させ、ファンがこぞって集まるイベントは日本でも珍しい。その秘訣を学ぶのも今回の出張の目的でもありました。
2日間、ホップ関連事業の現地視察と座学。遠野醸造さんをはじめ関連の事業者さん、地域おこし協力隊の皆さんとの面談。さらに遠野市の役場の方々と面談。
遠野視察で一番感じたことは、「結局は、人」ということでした。ホップ関連に従事している人の大半は外部からの移住者の皆さん。地域おこし協力隊の方が日本全国から集まっていますが、「ホップ、ビールに関する新規事業の立ち上げ」を明確にした志、意志がとても強い人たちばかり。遠野市側は、その成果を見込んでホップ・ビール関連だけで10名近くの地域おこし協力隊を募集するという政策。そこに5倍ほどの50人近くの応募があり、慎重に選考されるとのことでした。
人が人を呼ぶスパイラルが好回転して、優秀な人材と一緒に仕事をしたいと思う人材が集まる構造。
お出会いした皆さんが活気にあふれ、夢や目標を実現するために自身の仕事を精一杯頑張っている姿はなんとも頼もしく羨ましくもありました。
補助金をあてにした行政主導の一過性事業構築でなく、自分たち民間レベルでの事業構築。補助金は必要に応じ申請させ、それを議会に承認させるというこれまた行政の大きなサポート。事業者と行政の間にはがっちりタッグを組んだ相互の信頼関係があります。さらに、大手企業キリンビールの応援が加わり、市全体が活性化しています。
お話を聞けば、やはりスタートはそうではなかった。努力に努力を重ね、ひとつひとつ成功体験を積み上げ、そのたびに市民の理解を深めようやく今の形になってきたと。
すべてが、与謝野町のお手本です。この遠野モデルを与謝野バージョンへチューニングすること。事業デザインするのはそう難しくはないのだけど、「結局は、人」。この人集めをどうしていくのか。人の育成をどうしていくのか。つまるところそこになります。
与謝野ホップ事業はようやくスタートラインに立ったところ。ここからが一番大事な行アクションフェーズ。
近い将来、「東の遠野、西の与謝野」ブランドができるように、まさにホップ、ステップ、ジャンプです。