ここ数年間で日本でもどんどん加熱しているクラフトビールの世界。でも、その原料の1つである「ホップ」の実物を見たり触ったりした事のある人は、まだまだ少ないんじゃないかな?クラフトビールはホップ!クラフトビールの香り、苦みなどの個性はホップで決まるといってもいいくらい、ホップは大切な原料なんだ。でも日本では契約栽培されている関係で、実物に触れる機会がほんとになかった…でも、時代は変わった。日本でもフリーランスでの栽培がされるようになり、フレッシュホップが日本の醸造家たちに届けられるようになったんだ。
ホップは暑さに弱く、東北地方より北が生産の適地。関西でホップに会える…?そんなバカな!?ホップについて知っている方なら、きっとそう思うに違いない。でも、やってしまったのだよ、京都府の「与謝野町」が!しかも契約栽培ではなく、フリーランス*としてホップ栽培に成功したのは、この与謝野町が全国初。山と山の谷間に広がる平野の中で、生活に溶け込むようにホップが育てられているんだ。与謝野なら、ホップに会える。触れる。香りも直に楽しめる!
*フリーランス:専属契約を結んでいない、自由販売が可能な生産農家のこと
1960年代にアメリカ西海岸で起きたムーブメント、それがいわゆる「クラフトビール」の始まり。倒産しそうになったブリューワリー(醸造所)を立て直したのはなんと、スチームビールというスタイルを復興させた20代の若者だった。その後、東海岸でドイツの麦芽100%でビールを作ったブルックリン・ブリュワリーがきっかけになり、クラフトビールは1つの大きな流れになったんだ。
やがてクラフトビールはヨーロッパに先祖返り。その時、ヨーロッパ人は驚いたそうだよ。アメリカはただヨーロッパをモノマネしたんじゃなくて、アメリカンスタイル・ペールエール「IPA」という形で進化していたんだからね。じゃあ、何をもってアメリカンスタイルなの?と言われれば、それはやっぱり「ホップの違い」ということなんだ!
では日本ではどうだろう?最近でこそクラフトビールが普及し始めたけど、まだまだビールといえば…いわゆるピルスナースタイルのビール、たった1種類のカテゴリのビールがほとんどを占めているんだ。実はクラフトビールのカテゴリは全部で101種類もある。日本でメジャーなビールしか知らないとすれば、それは「100m走のことをスポーツと思っている」というくらいに、とっても狭い範囲のこと。ビールは、もっともっと多彩なものなんだ!そういった背景もあって、ジャパニーズスタイルのクラフトビール、というものは世界的にはまだ認められてない。日本らしさを出したビール、となれば、やはり原料のモルト、ホップが国産じゃないといけない。そこで与謝野の農家さんは、前代未聞のホップ栽培にチャレンジしてくれたんだ!
もともと日本ではホップ栽培はそれほど盛んではなかったから、ほとんどのビールで使われているホップは海外産。この時、ホップは乾燥させた状態で輸送されてくる。乾燥させると…明らかに「香り」は抜けてしまうんだ。国産ホップはその点、生のまま出荷できることも多いので、ホップの香りが存分に楽しめる。もちろん、与謝野ホップも基本的にフレッシュホップのまま出荷しているよ。その香りは、メジャーなビールしか飲んだことのない人にとっては、きっと新鮮な体験になると思う!
なぜ与謝野ホップは早く収穫できるのか、その正確な理由は分かっていない。でもきっと与謝野町の気候や風土に秘密があるんだろう。与謝野町は大江山連峰をはじめとした山に囲まれた町で、町の中央には野田川という大きな清流が流れている。谷に吹き込む風、水不足を知らない豊かな川の水、米栽培では食味ランキング特Aをとるほどの肥えた大地。さらに与謝野町が取り組んでいる自然循環農業の一貫で、おからや魚のアラを利用した肥料「京の豆っこ肥料」をホップ栽培にも生かしている。すべてが自然と一体になったホップと言えるね。
ぜひ多くの方に、ビールの多彩さを知っていただきたいと思い、活動しています。
私は25年前、たった1つのビールスタイルを「ビールだ」と思い込んでいました。あるきっかけでビールには色んなものがあるんだ、ということを知り、それまでビールの味わいを損していたような気分になりました。世界中を探しても、これほど多彩で選択肢が多いお酒は無いと思っています。クラフトビールの魅力は、その時の気分やシチュエーション、季節や時間帯などに合わせて「選べる」というのが最大の魅力だと思います。
ビールは五感で楽しめるお酒です。栓や缶を開ける音に始まり、味覚にも甘味・苦味・酸味があり、炭酸の刺激もある。料理に合わせられることはもちろん、音楽や観戦するスポーツや演劇、映画など、どんな状況にも「合うお酒が探し出せる」それがクラフトビールです。ぜひ、ビールというものの幅を広げて見ていただけると嬉しいです。
与謝野ホップはビールの可能性をまた広げてくれました。育ててくださっている農家さん、ご縁のあった関係者の方々に心から感謝しています。ぜひみんなでホップを楽しみましょう!