与謝野町観光協会 与謝野日々是

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ヨサヲとミヤコの往復書簡 京都に憧れる与謝野のヨサヲ。与謝野に憧れる京都のミヤコ。往復する2つの想いは、ただの雑感? それとも…。
煙やにおいが止まったとしても。変わる京の風情 令和元年12月4日

ヨサヲさま

 俳句はいま、ブームですよね。
 私も毎週、木曜夜のバラエティ番組『プレバト』を楽しみにしています。お題写真をもとに詠んだ句を俳人の夏井なつきさんが見事に添削していくのが気持ちいい!番組は毎夏、俳句甲子園で高校生と芸能人の対決を放映していますが、ぜひ、与謝野でもあるといいのに!
 写真で場面を想像して創作するのもいいけれど、はやり俳句の醍醐味は吟行にあり。
 蕪村、与謝野夫妻が足を運んだのも、与謝野の風景に身体を包まれてこそ生まれる作品に力があるのだと確信していたに違いありません。

 詩歌つながりで京都市内から話題をひとつ。

 「かにかくに祇園はこひし寝るときも枕のしたを水のながるる」
鉄幹の友でもあり、祇園を愛した歌人・吉井勇の代表作です。勇をはじめ、夏目漱石や谷崎潤一郎がひいきにした名物芸妓で知られる茶屋「大友」跡地に歌碑があり、毎年11月、祇園甲部の芸舞妓が歌碑に白菊を供える「かにかくに祭」も有名です。
 この祇園新橋(京都市東山区)でいま、「においは、景観か否か」を巡り、論争が起きています。
 煙とにおいを出しているのは、今春に大阪から初出店した高級焼き鳥店。地元の協議会は「外観だけではなく、空気感も風情だ」と主張し、店側は「脱臭機はコストがかかる」と難色を示しているのです。

 白川添いの石畳道一帯は国の重要伝統的建造物保存地区でもあり、「撮影1万円」の立て札が建つ花見小路とともに、祇園の人気スポット。小料理屋やスナックが立ち並ぶ飲屋街と隣接しているとはいえ、「かにかくに」の良き時代を彷彿とさせる風情のあるエリアです。
 確かに、ひとりの京都人として、煙やにおいは似合わない、とは思います。
 でもなあ、外観は格子に二階簾の伝統的な町家ながら、千枚漬けバーガーのある「ハードロックカフェ」あり、結婚式場の京都支店あり、と内容はかなり変遷しています。
 実は、勇の歩いた時代は土道で石畳ではなかったらしい。いまでは「伝統的で美しい」「京都らしい」と言われる景観さえ、後付けの面もあるのです。
 においが止まったところで、ヨサヲさんやお友達のおっしゃる通り、勇が愛した京の真の風情はすでに記憶の中にしかないのでしょう。

 変わるふるさとに嘆息しつつ、帰路、顔見世のまねきが上がった南座に、やっぱり心が染みました。昔から変わらぬ師走の京の写真を贈りますね。

ミヤコ
ハイ苦な町と俳句な町 令和元年12月4日

ミヤコ様

 祇園・花見小路の「撮影禁止」の看板、初めて知りました。(TVを全く見ないもので、話題のニュースに疎いです。)
 いよいよ、京都もここまできましたか。
 「許可のない撮影は1万円申し受けます。」確かに品がないですねえ。
 抑止的な意味なら、ほんと、要らないよなあ。1万円というのも何とも言えない。なぜ、1万円?と思っちゃう。5000円?10万円?まあ、いくらでもよかったのでしょうが、根拠のないことに思わず笑ってしまいます。そのうち、きっと「撮れないところで撮った写真」としてインスタをはじめとするSNSで盛り上がるような気がします。中には1万円を支払うことを覚悟にパシャパシャ写真撮る輩もいたりして。
 違う意味で、大混雑になったりしてね。そういうことをほんと楽しむ時代ですし。
 結果的に、ブランド力が低下することを危惧します。協議会の皆さん、そういう論議はされなかったのかしら。私なら、いっそ観光料(=エリア入場料)を徴収します、3万円。

 知人も言ってましたが、今の花見小路で飲んだりしないと。特に接待なんぞ絶対使わないと。店に入れば落ち着く空間でも、店にたどり着くまで、またほろ酔い気分で店を出た後、興醒め感が半端ないとのことでした。もう10年も前になりますが、よく花見小路の店にお客様をお連れしました。今までに体験したことのない、京都だけの持つ、ある意味異様な空間とみなさん大満足でした。
 そして今、違った意味で異様な空間となっているのですね。みなさん大不満にならないことを祈ります。

 そんな京都に比べのんびりしている与謝野で、先日「与謝野町蕪村顕彰全国俳句大会」の表彰式が行われました。蕪村ゆかりの地として、2012年からはじまった俳句の全国大会のひとつ。これには地元小中高生全員参加の力の入れようで。私も初めて表彰式を見に行きましたが、思った以上に感動しました。小中高生に限った「Buson俳句大賞」もあり、入賞者の小学生が自身の作った俳句を詠んで表彰される様は、なんとも素敵な光景でした。「与謝野」らしさを久々に感じた時間。着物も悪くないし、ホップも勢いあるけど、こんな文学的コンテンツも魅力的かも?と思った次第です。
 与謝野晶子、鉄幹、そして蕪村が、詠んだ町。その時の心境を図ることはできませんが、彼らの目に映った空間が、「詠むに値した」空間であったことを信じたい。
 たぶん300年前も今も実はあまり変わらない風景かもしれません。そんな町に気楽に暮らす自分が少し誇らしくもあります。 なんちゃって!

ヨサヲ
与謝野町観光協会 会員企業
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