ヨサヲさま
箱を出ては初雛のまま照りたまふ(水巴)
毎年なぜか初々しく、そして優美な雛飾りは、街道に春を呼び込みますね。
桃の節句のころ、各地の旧街道で雛人形の蔵出しがありますが、与謝野町加悦は格別です。その豪華さで地域の栄華がしのばれるからです。人形たちの顔はもちろん可憐だけれど、加悦の深い歴史や地域の人々の思いを語って表情に大人びた誇りさえ感じます。
恒例のひなめぐり、ことしは旧尾藤家など限定的で、旧家の蔵で眠るお雛様たちの「世間はまだコロナ禍とやらなのか…」という嘆息も聞こえます。
来春こそは雛飾りを数珠つなぎに、街道に春を彩ってほしいです!
京都市内も緊急事態宣言解除と春の訪れで、徐々ににぎわいが戻っています。
先日、新装オープンした京都市美術館、もとい、京都市京セラ美術館(まだ全然、しっくりこない)を歩きました。
岡崎かいわいは空も広く開いていて気持ちよく、散歩にはもってこい。とはいえ、正直、驚きました。平日というのに、カフェは満員。館内は螺旋階段などインスタ映えしそうなスポットも多く、若い女性たちがあちこちで自撮りしてました。
この美術館は昭和8年に開館した、現存するなかでは最古の公立美術館建築です。ご承知の通り、数年前からリニューアルに着手、特にエントランスが大きく変わりました。
地上から少し掘り下げて、旧建築正面に入場口を足した形ですが、従来の堂々とした風格が、かなりカジュアルになりました。両サイドにはショップとカフェ。正直「若い人受けする、イマドキな普通の美術館になったな」との印象です。私的には、ちょっと残念です。
現代アートの展示場として新設された目玉の「東山キューブ」にも行ってみました。1989年から2019年を振り返る「平成美術 うたかたと瓦礫(デブリ)」という特別展が開催中です(4月11日まで)。
企画展の入口には、平成を新聞記事などで振り返る巨大なブラックボードがありました。バブル経済崩壊、阪神大震災や東日本大震災をはじめとした相次いだ災害など、こうして一覧すると、なんとも不穏で焦燥感にかられる時代だったと改めて思います。展示も、がちゃがちゃと不安定に積み重ねた、瓦礫のような印象の作品が多かったです。
今週は、震災から10年目のメモリアル。さすがに瓦礫は姿を消しましたが、被災地の現状は「まだまだ」という言葉を何度繰り返しても足りません。平成はまだ、終わっていない気がします。
京都府は、非常事態宣言が2月末で解かれ、1日からは飲食店などへの営業時間短縮の要請は継続されるものの、少しづつ普段の日常を取り戻すような気配を感じます。これを春の訪れとは言えないでしょうが、自分の気持ちはそうありたいと思います。
先週より、与謝野町ちりめん街道旧尾藤家住宅や旧加悦町役場庁舎では、毎年恒例の雛壇が飾られました。ちりめん街道のひな巡りは中止となりましたが、それでもこうした伝統の行事、季節の風物詩は、この町の人を元気にします。もちろん準備や日々の管理は大変ですが、それでも地域の皆さんが一堂に会し、協力し合い、助け合って作業する様は、本来のコミュニケーション、地域活動です。特に地方では、この協力し合いの日常があっての個々の生活ですから。いわゆる、鴻上尚史氏のいうところの「村の世間」の素晴らしい一面です。
今年は、KBS京都の生中継もタイミングよく入り、放送直後からお客様が増えました。なかには、今テレビが来とる!と慌てて来られるご近所の方とか。こんな些細な日常の風景が、なんとも微笑ましい。ちっちゃな春の訪れを感じました。
さらに、旧尾藤家住宅では、丹後の織物事業者さんとシーラ・クリフさんのコラボ展示が開催されていました。丹後地域の織物事業者さんの様々な商品を一堂に集め、シーラ・クリフさんの感性での着物コーディネーションするという、まさにオールタンゴの企画展示です。この催しは3月15日から東京高島屋の日本橋店1階で開催される予定で、旧尾藤家住宅の展示はその前哨戦といったところ。さすがに、本場着物処に相応しい展示となっていました。どうやら格式高い高島屋日本橋店の1階で展示イベントができるのは、初めてだそうで。丹後ブランドの東京ど真ん中、進出です。がんばれ丹後ちりめん!
CM出演でシーラ・クリフさんの知名度が上がっても来ている中、このイベントは丹後に事業者さんにとっては絶好の機会となれば、丹後の春です。
3月11日は、東日本大震災から10年。こちらも決して忘れることができない記憶。コロナ禍の終息と合わせて、穏やかな春の訪れを心より願います。