ヨサヲさま
俳句はいま、ブームですよね。
私も毎週、木曜夜のバラエティ番組『プレバト』を楽しみにしています。お題写真をもとに詠んだ句を俳人の夏井なつきさんが見事に添削していくのが気持ちいい!番組は毎夏、俳句甲子園で高校生と芸能人の対決を放映していますが、ぜひ、与謝野でもあるといいのに!
写真で場面を想像して創作するのもいいけれど、はやり俳句の醍醐味は吟行にあり。
蕪村、与謝野夫妻が足を運んだのも、与謝野の風景に身体を包まれてこそ生まれる作品に力があるのだと確信していたに違いありません。
詩歌つながりで京都市内から話題をひとつ。
「かにかくに祇園はこひし寝るときも枕のしたを水のながるる」
鉄幹の友でもあり、祇園を愛した歌人・吉井勇の代表作です。勇をはじめ、夏目漱石や谷崎潤一郎がひいきにした名物芸妓で知られる茶屋「大友」跡地に歌碑があり、毎年11月、祇園甲部の芸舞妓が歌碑に白菊を供える「かにかくに祭」も有名です。
この祇園新橋(京都市東山区)でいま、「においは、景観か否か」を巡り、論争が起きています。
煙とにおいを出しているのは、今春に大阪から初出店した高級焼き鳥店。地元の協議会は「外観だけではなく、空気感も風情だ」と主張し、店側は「脱臭機はコストがかかる」と難色を示しているのです。
白川添いの石畳道一帯は国の重要伝統的建造物保存地区でもあり、「撮影1万円」の立て札が建つ花見小路とともに、祇園の人気スポット。小料理屋やスナックが立ち並ぶ飲屋街と隣接しているとはいえ、「かにかくに」の良き時代を彷彿とさせる風情のあるエリアです。
確かに、ひとりの京都人として、煙やにおいは似合わない、とは思います。
でもなあ、外観は格子に二階簾の伝統的な町家ながら、千枚漬けバーガーのある「ハードロックカフェ」あり、結婚式場の京都支店あり、と内容はかなり変遷しています。
実は、勇の歩いた時代は土道で石畳ではなかったらしい。いまでは「伝統的で美しい」「京都らしい」と言われる景観さえ、後付けの面もあるのです。
においが止まったところで、ヨサヲさんやお友達のおっしゃる通り、勇が愛した京の真の風情はすでに記憶の中にしかないのでしょう。
変わるふるさとに嘆息しつつ、帰路、顔見世のまねきが上がった南座に、やっぱり心が染みました。昔から変わらぬ師走の京の写真を贈りますね。