10月、海の京都DMOより、丹後きものまつりとその前夜祭となる天橋立のナイトイベントにお招きいただきました。私は今回、着物を愛する海外からの3人の素敵な女性たちを連れて行ったのですが、他の3人にとって天橋立に行くのは初めてで、皆旅行の数日前からワクワクしていました。あいにく道中の天気はあまり良くなく、日本の秋を連想させるすっきりと気持ちの良い晴れ日ではありませんでしたが、現代の気候としてはこの時期、曇りや雨が続くのも当たり前になってきているようにも思えます。しかし、私たちの気持ちは天気によって弱められることはなく、目的地に近付くほどより高まっていきました。また、京都から天橋立までの電車での移動中、野生の鹿を目撃できればと期待していましたが、見事、偶然見ることができて満足でした。
天橋立に着いてから、まず丹後ちりめんの着物を初めて着付けていただきました。どれも職人さんの手によって仕上げられた高品質な作品です。私は頻繁にはフォーマルな着物を身につけませんので、いつもの普段着きものと異なり新鮮な気分でした。袖はより長く、生地はとてもしなやかで柔らかく、豪華でした。私は松葉のデザインが織り込まれた淡紫色の色無地を選んで着たのですが、それは天橋立が砂州という地形で道が松の木で覆われているため、まさにこの場所にふさわしいと思ったからです。着替えた後はイベント会場に行く予定になっていましたが、ちょうど雨が降っていたので水たまりを避けるように慎重に歩いていきました。
その後は着物でのナイトクルージングが準備されていましたので、私たちはボートの着く波止場へと向かいました。その近くの雰囲気良いレストランには丹後のシルク作品が多く天井から吊り下げられて展示されており、照明によって様々な色合いに輝いていました。
私たちはボートに乗り込み、スパークリングワインを一杯いただいて、港を出発しました。乗船中にちょうど夕日が沈んでいき、途中で雨も止んできたので、デッキに上がりました。響くサクソフォンが演奏され、音楽と海風を楽しみながら、遠く海岸沿いにぼんやり灯る明かりの数々を眺めていました。それはまるで夢の世界にいるような感覚でした。
先ほどのレストラン会場に移ると、丁寧に準備された地元料理のビュッフェが振る舞われていました。白く四角い和紙のお皿の上に盛り付けられたその料理の数々は、見た目も味も魅力的でした。私はそこでトークショーのお時間を少しいただき、自身の着物への愛情について、また着物が時代を越えた素晴らしいファッションアイテムであることについて、そして丹後という地域では人々がそこで働き暮らしながら自然とともに美しく調和していることについてお話しました。ここでは他の土地で見てきたような巨大な工場の機械に人々がコントロールされていないことが私には素晴らしく感じられます。
前回の旅行以来、私は天橋立を歩いて横断したいと思っていましたが、今回はあいにくスケジュール的に時間が足りませんでした。目覚まし時計を午前6時にセットして、静かに着物に着替えました。早朝、松の木々の隙間に差し込む光には心が洗われるようです。松並木の道には何人かの歩行者やランナーがいて、私も道の両側にある穏やかな海を眺めながら、一人で散歩していました。松の香りと、古く捻れた樹木の幹、そこに生えている苔を見て楽しみ、爽やかな朝を迎えることができました。
朝食後は、天橋立のまちなかを歩いてまわり、写真を撮って楽しみました。きものまつりと言うだけあって周囲には着物を着ている人が本当に大勢いて、まちの風景がより魅力的に高められていました。私たちはメインのパレードを見て、きものクイーンと交流し、毎年人気というスタンプラリーにも参加しました。まわりの人々はファッションショーや着付けのレッスン、和太鼓の演奏を楽しんでいました。皆が笑顔で幸せそうに見えて、本当に素敵なことだと思いました。着物を通じて丹後と繋がりを持てたおかげで、このような美しいイベントに参加することができ光栄でした。