ひんがしに 日の沈みをる 花野哉
江山文庫が所蔵する虚子直筆の掛軸をもとに制作されました。
刻まれている俳句は大正四年九月、虚子四十二歳の時に詠まれたものです。
ひんがしに 日の沈みをる 花野哉(かな) 虚子
冒頭にある「ひんがし」とは東のこと。
季語は「花野」。秋の草花が一面に咲き乱れる広い野原のことです。
【句意】
東の方から夜が明けはじめた。薄明かりの空は次第に明るくなってゆくが、太陽は未だ顔を出さない。
しかし秋草が一面に咲いた花野は、すでに明け方の紫を帯びた微妙な光を受けて、美しく輝いている。
当時、虚子が弟子たちとともに開いていた俳句の鍛錬会「俳諧散心」の第九回席上で詠まれたもの。与謝野町を題材にしたものではありませんが、そもそもどこか特定の地域を詠んだ句ではないようです。
与謝野町の花・ひまわりに代表される、夏の花々が元気一杯に咲き乱れる炎天下とは趣きの異なる、秋の野原のひっそりとした夜明けの美しさや風情を楽しむ一句といえます。
また同じ滝地区内の加悦椿文化資料館前には、虚子の孫で江山文庫俳句大賞の初代選者をつとめた稲畑汀子の句碑も見ることができます。
与謝野町の文学の発信拠点である「江山文庫」から徒歩数分。森のレストランと日帰り入浴が楽しめる大浴場を備えた「リフレかやの里」第3駐車場横にあります。
句碑の向こう側には、加悦の谷のどかな田園風景。米づくりが盛んで、水田が多い町である与謝野町の原風景が残ります。
親水公園の与謝蕪村句碑をスタート地点として、与謝野町観光協会前(よさの野菜の駅前)の与謝野礼厳歌碑、与謝野鉄幹歌碑、高浜虚子句碑、そして江山文庫を徒歩で散策すると、片道徒歩20〜25分程度。自然の空気を感じながらのウォーキングにいかがでしょうか。